SSブログ

第35回 社会福祉士試験 合格率44.2%の衝撃 [社会福祉]

精神保健福祉士の試験は合格することができた。その経過についてはまた別のエントリを設ける予定。

■ 社会福祉士試験 合格率44.2%の衝撃

さて、今年(2023年)2月の社会福祉士試験の合格基準は90点だった。

合格基準は「問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数」と決められている。現カリキュラムが採用された2010年(第22回)以降、ぴったり90点ということはなかったが、例年90点前後であった。――例外は2013年(第25回)の72点と208年(第30回)の99点だ。

それが昨年第34回では、105点というそれまでにない高水準だった。この数字は、100点取れば合格と信じていた人たちや、90点+αでもまだ合格の可能性があると信じていた人たちを、絶望の淵にたたき落とした。いったい何点取ればいいのかと。

しかし、年度間の公平性を保つために合格率を30%程度に維持するという点で、昨年の105点は妥当だという記事を昨年書いた。
(その記事内の表とグラフが間違っていたので訂正しておいた)。

■ 今年も高い合格水準が予想された

赤マル福祉のWeb自動採点は、多くの人が利用する自己採点ツールだ。

自己採点を使った人の平均点は、2月7日の時点で107.8点、3月15日時点で106.1点だった。
この平均点は、実際に受験した人の平均点を大きく上回るのが普通だ。なぜなら、試験の出来が悪かった人は採点するまでもないと考えるからだ。

毎年、赤マル福祉の自己採点の平均点と合格基準の点数の差は±3点の範囲に収まってきた。昨年も、赤マル福祉の平均点が106.1点で、合格基準が105点だった。

そのため、今年も合格基準は105点前後、少なくとも100点を超えるという予想が多かった。しかし、蓋を開けてみたら、なんと90点だったのである。結果として合格率は44.2%と例年の3割の1.5倍にもなった。

社会福祉士試験の合格基準と合格率

■ なぜに90点

前の記事にも書いたが、昨年の105点という合格基準を受けて、日本社会福祉士会、日本ソーシャルワーク教育学校連盟(ソ教連)から「もし上位30%ラインでの基準調整がされているなら、それを廃して6割程度以上を得点した者はすべて合格とすべし」という声明が出された。

(私は知らなかったが、99点だった第30回の後にもソ教連の会長談話が発表され、「60%の得点(90点)を著しく上回ることのないようにすべき」と言っている。)

今回の90点というのは、まさにその声明に沿った基準だと言える。専門科目のみの合格基準も、精神保健福祉士試験の合格基準もきっちり6割となっていた。

社会福祉振興・試験センターが声明の意図を汲んで、合格基準を6割にした背景はなんだろうか?

受験者数と合格者数

社会福祉士試験の受験者数は、2017年(第29回)の45,849人をピークに毎年減り続けてきた。その理由は明らかで、福祉系大学の新卒受験者が2010年(第22回)には14,199人いたのが、2020年頃には8,000人あまりにまで減ってしまったからである(短大卒+実務経験ルートでの受験者も減っている)。

福祉系大学卒の受験者は、新卒時の合格率は5割程度とまずまずなのだが、2回目以降の受験者(既卒受験者)の合格率は十数%と低いのである。四年制大学の福祉学部をを卒業したのに、結局社会福祉士資格を取らずも結構いるのだろう。

学部は出たものの資格が取れない、という人が多ければ学部の人気に影響が出る。学生の数が減るのは大学にとっては死活問題だ。そして、試験の受験者数が減るということは、合格者も減り、社会に供給される社会福祉士の数も減ってしまう。

合格率をアップさせることは、当座の社会福祉士の供給数を増やし、大学の学生増にも寄与するだろう。

社会福祉士試験の合格率が3割と低めに設定されてきたのが、高度な教育を受けた専門職という社会的評価を確立するためだったとするならば、学生数の減少という現実によって、その高い理想を取り下げた、と言えるのかもしれない。

■ 44.2%の衝撃

むしろ90点という合格基準にもかかわらず、合格率が44.2%にしか達しなかった、ということのほうが驚きである。赤マル福祉の平均点が106点ならば、合格基準を90点としたら、合格率は5割を優に超えるだろうと思ったものだ(7割ということもあるかもしれないとも)。しかし、44.2%だったのである。

これは、今回の試験の平均点が90点以下だということを意味する。

社会福祉士試験の得点分布は公表されていないが、赤マル福祉の自己採点ではその平均点前後に密集している。だが、受験者全体では、ずっと低い点数を取っている受験者がかなり多くいて、平均点を押し下げているということになる。(赤マル福祉の自己採点の得点分布には、実は30点あたりに小さなピークがある)。

合格基準を下げても、合格率が1.5倍にしかならなかった、50%を越えなかったということの方が衝撃だったのである。

調べてみると、2回目以降の受験者(既卒受験者)の合格率が低いのは学部卒だけではなかった。社会人向けには短期養成(9か月)と一般養成(18か月)の課程があるが、どちらも2回目以降の受験者の合格率はここ数年十数%だった。それが今年は、学部卒・短期養成・一般養成ともに約3割まで増えた。しかし、3割にまでしか増えなかったとも言える。

得点分布が正規分布になっているはずだ、という思い込みがあったのだが、実はロングテール形状をしているようなのだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:資格・学び

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。