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どんな人が公認心理師試験を受けたのか? [心理の資格]

第5回の公認心理師試験の合格発表から約2週間後の9月4日に、日本心理研修センターから「受験申込時における調査の集計結果について」という発表があった。
http://shinri-kenshu.jp/topics/20220907_2207.html

第1回から第5回の受験申込み時の書類にあったアンケートの集計結果である。
アンケートの内容は、実務経験の長さ・保有資格・最終学歴・職業領域・勤務先の種別・主たる心理業務の内容・勤務体系(常勤・非常勤)である。アンケートへの回答率はいずれの回も8割以上である。

ざっくりExcelシートに集計してみた。
https://d.kuku.lu/5badca242

■保有資格から

保有資格を見ると、臨床心理士が、
79.8%→26.6%→14.2%→7.1%→2.3%
と最初は8割を占めていたものが、回を追うごとに急激に減少している。
臨床心理士の人たちの大半は、最初の2回で合格していったのだろう。
第1回の区分Gの比率が約5割であることからすると、臨床心理士であるにもかかわらず区分Gで受験せざるを得なかった人も多かったはずだ(たぶん1万数千人)。

では、受験者の中から急速に姿を消していった臨床心理士の代わりに、第2回以降はどんな人たちが受験していたのだろうか。

まず、教育関係――教員としての資格を持っている人および大学などで教員をしている人――の割合は、すべての回で3~4割を占めていた。常に1/3は教育関係者だったわけだ。

次に、保健医療関係の資格(医師・看護師・保健師・作業療法士)を持っている人であるが、
4.2%→10.2%→15.5%→20.4%→28.2%
と、どんどん増えてきた。ただし、医師資格者は常に1%内外である。
また、保健師は必ず看護師資格も持っているはずだ。
それを踏まえると、保健医療関係者の割合は最終的にも2割を少し超えただけだったのではないだろうか。

福祉関係の資格(精神保健福祉士・社会福祉士・介護福祉士・保育士)は、
17.8%→34.8%→41.6%→48.4%→53.1%
と、第2回以降は一大勢力になったのだが、これも注意が必要だ。三福祉士は複数の資格を持つ人も多いことを踏まえると、福祉関係者の割合は最終的にも1/3程度だったと思われる。

そして、その他の資格(内容不明)と資格無しという人たちが、毎回2割程度存在していたようだ。これはおそらく、これまで挙げた資格を持っておらず、なおかつ心理の仕事(カウンセラーなど)をしている人たちであろう。

ざっくりまとめると、
教育関係が3割(主に教師)
医療関係が2割(主に看護師)
福祉関係が3割
臨床心理師以外の心理職が2割
といったところだろうか。

おそらくこのような比率になることは、受験制度の設計時に想定されていたはずだ。もし想定と極端に外れていたとするなら、途中で何らかの修正が施されるはずだからである。

■合格者の中の臨床心理士の比率

ともあれ経過処置のある5年間は終わった。これまでの5回の試験に約12万1千人の受験者があり、そのうち約5万6千人が合格した。

一方、臨床心理士は昨年までに約4万人の合格者がいる。歴史ある資格でもあり、5年ごとの更新も必要なので、登録者数は3千~4千人ほど少なくなる。さらに、臨床心理士でも公認心理師試験を受けなかった人もおり、もちろん合格率は100%ではない。それらを踏まえると、臨床心理士で公認心理師資格を得た人は、おそらく3万人前後であり、3万人を切っている可能性の方が高いと予想する。

というわけで、第5回までの公認心理師試験の合格者の中で、臨床心理士とのダブルホルダーが半数を少し超える程度になったと思われる。


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過去問の学習の仕方 [心理の資格]

公認心理師試験は、基本的に過去問を勉強していれば合格できる、という話をしていたところ、過去問をやったけれど歯が立たなかったという反論をいただいた。

あまり詳しく事情を聞いていないのだが、どうやら過去問の勉強の仕方を知らないのではないか、と思われるフシがある。そこで、過去問の勉強の仕方を書いておこうと思った。

例として、第5回公認心理師試験の午後の第89問を取り上げる。正解は②である。



たぶん心理学について学んだことがなくても、④⑤は除外できるだろう。ギリシャ・ローマ神話についての大ざっぱな知識があれば③も除外できる。残された①②から一つを選べば、50%の確率で正答できる。そこで「正答できたから良かった」と安心してしまうのでは、何の学習にもならない。①を選んでしまって、自己採点して間違いと分かり、これは単純接触効果であるという知識を身に付けられれば良いのだが、そのためには、まず間違えなければならない。

過去問をやるときには、なるべく間違えた方が良い
(正答して喜ぶのは愚か者のすることである)

さらに、それぞれの選択肢についてテキストを調べてみる(基本的には索引をひけば良い)。

①の傍観者効果は、何らかの苦難にある(暴漢に襲われているとか、道に倒れている)人を目撃したとき、目撃者が一人ならその人が救助の行動を起こす確率が高いが、目撃者が多いと行動を起こす確率が下がるという現象。(自分以外の誰かがやってくれるという期待が起きるのだろう)。

②の単純接触効果は、接触の回数が多いものに好感を持つという現象。(毎週観ているテレビドラマの主題歌が好きになるとか)
自分の顔は、鏡で左右反転した像を見慣れているので、写真に写った(左右反転していない)自分の顔に違和感を感じるのである。

ピグマリオン効果は、教師から期待されている学習者の成績が向上するという現象。似たようものとしてホーソン効果というものもある。

自己中心性バイアスとは、自分の知識や経験を元にして相手の心情を推し量ってしまうことで、自分が推測した相手の気持ちと実際の相手の気持ちとのあいだにずれが生じることである。(相手はきっとこう感じているに違いないと思っても、実際の相手の気持ちは全然違ったりする)

セルフ・ハンディキャッピングとは、自尊心を守るために、失敗しそうなときに自らに悪条件を課すこと。(苦手な試験の前に勉強するのではなくゲームで遊んでしまって、勉強できなかったから試験に落ちたのだと自他に言い訳する)

このようなことを、一問一問繰り返していくのである。各選択肢を調べておけば、自分が除外した選択肢についても、それについての知識を身に付けることができる。

もちろん、テキストを全部勉強すれば、もっと知識が身につくだろうし、それが勉強の王道であろう。しかし、試験の合格という目的を達成するためには、このような過去問勉強法が効率が良い。なぜならば、テキストの中にある情報が一様に試験に出されるわけではなく、試験に取り上げられやすい情報もあれば、そうでない情報もあるからだ。

自動車運転免許の学科試験と違って、過去問とまったく同じ問題が繰り返し出題されるということはない(と思った方が良い)。だが、各選択肢の内容まで学んでおけば、幅広く対応できる。

このように過去問を勉強するのだ、と説明したら、「とてもそんな面倒なことはやってられない」という人もいらした。面倒に思うのなら、一日一問ずつやるなどの方策を考えた方が良いだろう。

ちなみに、ネットで調べた結果は安易に信用しない方が良い。間違った、あるいは偏った説明がされているページもあるし、最近のGoogle検索は精度が悪く、そういうページが検索上位に上がってくることがあるからだ。

受験のテクニックを使って合格することには批判もあるのは承知している。その分野の勉強をきちんとすべきなのはもちろんだ。だが、その分野の勉強をきちんとしたとしても、試験に合格できなければ資格を得られないのだから、テクニックも大事なのである。
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