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公認心理師資格取得顛末記(その1 受験まで) [心理の資格]

公認心理師試験に合格したので、今回はそれについてのメモ書き。

資格創設まで:
公認心理師は心理職の国家資格である。2015年に公認心理師法が可決されて、2018年に最初の試験が行われた。

それ以前から臨床心理士という資格が存在している。大学院まで学ばねば受験できない難易度の高い資格だが、民間資格である。

アメリカには psychologist(サイコロジスト、心理学者や精神分析医と訳される)という職業資格がある。サイコロジストは、精神科医(psychiatrist、サイシアトリスト)とは違って医者ではないものの、精神疾患を扱いながら、医師の指示下にはない独立した専門職だ。資格を得るには、大学院の博士課程を納めて(つまりサイコロジストは全員ドクターである)、さらに実務経験も積まねばならない。単なる心理カウンセラーとは違う、心理の専門家と言える。

臨床心理士はサイコロジストに匹敵する資格を目指して作られた資格だ。だが、日本では医師会の政治力は強い。臨床心理士は医行為はできない。医師とは独立した心理の専門職ではあるものの、活躍の場が限られてしまう。心理カウンセラーとして開業しても、健康保険の対象ではないので、費用はクライアントの10割負担となってしまい、割高感が生じて集客に苦労する。医療機関や学校にカウンセラーとして雇用されても、非常勤であることが多く、多くの人は少ない年収に甘んじている。

だから、心理の人たちは、臨床心理士資格の国家資格化と、業務範囲の拡大を目指して長年運動を続けてきた。一方、医療側からは、医師の指示の下で働いてくれる医療心理師を国家資格として新設して欲しいという要望がでてきた。

この構図は「MSW(医療ソーシャルワーカー)が資格化されなかった事情」と同じだ。医師側は、医師の指示の下で働いてくれるコメディカルとしての資格を作って欲しい。他方、専門職側は医師とは独立した国家資格を作りたい。このせめぎ合いの中で、ソーシャルワーカーの場合には国家資格が三つできてしまった(社会福祉士・精神保健福祉士(PSW)・介護福祉士)。

ソーシャルワーカーの場合に、社会福祉士とMSWの資格創設が並行して進んだように、心理の場合にも臨床心理士と医療心理師の資格創設が並行して進められた。しかし、途中から臨床心理士資格は民間資格として存続することになり、資格創設は医療心理師のみに絞られ、業務範囲を医療以外にも拡大する形で最終的に公認心理師という資格が作られた。

公認心理師(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116049.html
一般財団法人 日本心理研修センター
http://shinri-kenshu.jp/

臨床心理士の養成課程が心理学の修得と実践に重きを置き、心理の専門家を育てるためのものであったのに対し、公認心理師の養成課程は、心理学だけではなく、コメディカルとして働くために必要な医学の知識や、教育・福祉・産業・司法の分野で働くための各分野の行政法の知識を教えるものになっている。

臨床心理士が「孤高の専門家」といった印象ならば、公認心理師は多職種連携チームの中で働くというイメージだろうか(職責の中に「連携」が規定されている)。

既卒者や現任者に対する措置:
公認心理師の養成課程は大学4年+大学院2年になった。もちろん養成課程は法の施行後に作られたわけだから、学卒の人たちが国試を受験するのは、養成課程ができてから6年後の2024年からになる。

過去に大学院で心理学を学んでいた人たちは、当時の科目を公認心理師の指定科目に読み替える「科目の読み替え」を行って受験資格を得た(区分D)。最初の試験(2018年)には、この人たちが大量に受験して8割ほどが合格していった。

そして、現任者という受験枠も設けられた。これは実際に心理の仕事を5年間やっていた人たちが「現任者講習」を受けることで受験資格を得る仕組みだ(区分G)。これは5年間だけの経過措置である。

現任者に対する経過措置は多くの国家資格の創設時に行われている。長くその仕事をしている人たちは、国家資格ができたからとて、養成機関に入学して学び直すことは難しい。そこで、実務経験が証明できるのであれば、現任者講習を受けることで受験資格を与えるということが行われる。公認心理師だけが特別にそのような措置が行われたわけではない。

ただ、コメディカルの資格創設の時には、実務経験の証明は医療機関への勤務履歴の証明にほぼ等しかったわけだが、公認心理師の場合には、医療だけでなく教育・福祉・産業・司法と幅広い分野が定められていたため、学校の教師とか、私のように障害者施設での生活支援員まで含まれることになった。この中には、心理学を専門的に学んだことのない人もかなり含まれるので、心理の人たちからは「心理を学んだことがない者に受験資格を与えている」という批判もあった。おそらく、精神保健福祉士の人たちが働いてきた領域を含める必要はあったのだろう。ともあれ、法の定めのある施設(法内施設)が発行した実務経験証明書がリジェクトされた、という話は聞いたことがない。

一方で、カウンセラーとして開業するのには申請などは不要だ(法外施設とか民間機関などと呼ばれる)。自分で開業したり、法外施設に雇われていた場合には、実務経験の証明にかなり苦労したようだ。法人の登記謄本だとか、定款だとか、税務署への開業届、法人税の申告書だとか、業務委託の契約書などを添付して、心理の仕事をしていたことを証明しなければならず、多くの実務経験証明書がリジェクトされ、怨嗟の声が上がっていた。

一年目(2018年)の試験:
ともあれ一年目は、区分Dで1万8千人余り、区分Gは1万7千人足らずが受験した。1万7千人に対して現任者講習が行われたので、各会場とも数百人の大会場で行われたという。ちなみに、所定講習時間は30時間なので、4日間の日程で行われたところが多かった。一年目の現任者講習に出た人の話では、やはり心理の分野の人が多かったという。

一年目(2018年)の試験の合格率は、区分Dが約85%、区分Gが73%。

また、北海道で地震があって、試験が受けられなかった人のために、追加試験が行われた。これは二年目に受験する人たちには大きなメリットになった。なぜなら、過去問の量が倍になったからだ。一年目に受験した人たちからは、「現任者講習で学んだことが出なかった」という不満が出ていたが、過去問がない一年目の受験はそれだけ不利だ。にもかかわらず、合格率が高かったのは、心理学の専門家として合格せねば沽券に関わる人が多かった・・・のかもしれない。

二年目(2019年)の試験:
二年目の現任者講習は、医療分野の人(看護師とか)が多かったと聞いた。受験者はぐっと減って、区分Dが5千人余りに対して、区分Gが1万1千人余り。合格率は区分Dが約56%、区分Gは約42%。私の妻はこの試験で合格した。

三年目(2020年)の試験を受けることに:
一年目、二年目で分かったことは、現任者講習の枠はすぐに埋まってしまうということだ。申込期間が始まったらすぐに申し込まないとならない。私は三年目(2020年)の試験を受けるべく、2019年8月に申し込んだ。講習会は12月の土日を2回使って行われた。会場には500人近くがいた。社会福祉士の養成課程で一緒になった人もいて、立ち話をした。テキストは、妻が前の年に使ったのを借りた。改訂版が出ていたはずだが、そんなに違わないだろうということで。

講習は朝9時前から夜7時過ぎまで、みっちり講義を聴く形式。たまに隣や近くの人とのグループワークがあったが、それ以外は寝ないでいるのが重要なことだ(法定講習は寝てはいけない)。医療分野の講師は精神科医だったが、他の分野は、その分野で働いている心理の人たちだった。受講者は、私の周りは学校の教師が多かった。他には産業カウンセラーの人や、司法分野の人など。

試験は2020年6月に行われるはずだったが、新型コロナウィルス感染症の蔓延で延期になった。新しい試験日が知らされたのが8月。試験日は12月だった。すでに10月には別の国家試験(情報処理技術者試験)を受けていたので、アンダーコロナの試験がどんな感じなのかは分かっていて、そのことに不安はなかった。

勉強はどのようにやったのか? 心理学の勉強はしておかねばならない、と思った。ちょうど社会福祉士の養成課程(通信教育)にいて、各科目ごとにレポートを課されていた。心理学という科目もあったので、その教科書一冊を最初から最後まで読み、要点をレポート用紙にまとめたら10枚になった。この作業は多少は役に立ったように思う。その中身については、このブログで書いていってみようかと思う。

あとは、試験の直前になってから過去問をやった。試験の直前に休暇を取り、金曜・土曜と、二年目の試験問題を解いた。間違えた問題には付箋を貼り、二回目はその問題だけ解いていった。毎度のことながら、過去問集の冊子には、付箋がたくさん貼られてハリネズミのようになるが、それで良いのである。二年目の過去問の二周目を終えたのが、土曜の夕方だった。それから、一年目の試験問題の冊子に取り掛かったのだが、時間が足りずに冒頭のところしかできなかった。

当日は試験会場の開場後すぐに会場入りし、一年目の試験問題の残りをできるだけやった。試験時間は午前が2時間、午後も2時間。試験はすべてマークシートだ。会場には空席が結構あった(もともとコロナ対策で間隔を空けて座らされていたが、それでも来ていない人がいた)。試験が延期された影響もあるのかもしれない。午前中だけで諦めて帰ってしまった人は、ごく僅かだった。

その2に続く)(2021/3/19 受験者数の数字が誤っていたので修正した)
タグ:公認心理師
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