社会福祉士の試験を受ける人たちの内訳 [社会福祉]
社会福祉士試験の登録者数は約25万人だ(2021年1月末、登録者数の状況)。
毎年の受験者数や合格率は、過去の試験問題のページにある。
近年3回(2018~2020年・第30~32回)の平均を出してみた(以下、10の位で四捨五入し100人単位にしてある)・・・来週第33回の結果発表があるので、あわててこの文章を書いている。
もうちょっと細かな数字が欲しいところだ。実は、養成課程のスクーリングの第1回でその数字をちょっと聞いたのだが、記憶が不正確だったので発表されている数字を探してみた。
日本ソーシャルワーク教育学校連盟の 国家試験情報のページに、学校別の数字が掲載されており、各ジャンルごとの新卒・既卒の数字も載っている。近年3回(第30~32回)の平均の数字を計算してみた。
[四年制福祉系大学卒]
四年制の福祉系学部を卒業見込みで受験する人たちは新卒にカウントされる。卒業の年に合格できず、翌年以降受験する人たちは既卒にカウントされる。近年3回の平均が以下の表だ。合格率は新卒が55%で、既卒は13%だ。
近年3回について、不合格者数と翌年の既卒受験者数を比較すると、約3千~4千人の差がある(平均すると約3,500人・・上の表の※)。つまり、毎年新規に約8,600人が受験しているが、同時に約3,500人の不合格者が翌年の受験を諦めている計算になる。
もちろんこれは、コホートを追跡調査をしたわけではなく、統計上の数字からの概算に過ぎない。しかし学部卒者の約4割もが資格取得を諦めているという数字は、ちょっと衝撃的だ。(3,500÷8,600=0.40という計算)。ただ、既卒者の合格率が13%と低いのでは、諦めたくなる気持ちも分からなくはない。
現在のカリキュラムになった2010年(第22回)試験の数字が下の表だ。当時と比べると、新卒での受験者数が5千人以上減って、合格率が35%→55%と上昇している。
この年の新卒・既卒あわせた不合格者数は約22,000人。それに対して翌年の既卒受験者数は約16,000人。実に約6,000人もが翌年の受験を諦めている計算になり、新卒受験者数に対する比率は約4割で、この数字は10年後の現在も経ってもあまり変わっていない。
[福祉系短大卒+実務経験]
福祉系の短大を卒業し、その後に実務経験を積んで受験資格を得た人たち。実務経験が必須なので新卒という分類がない。
10年前は毎年3,000人受験していたのに、こちらも減っている。
[一般養成課程]
社会人の一般養成課程の近年3年の平均はが下の表だ。既卒の合格率は学卒や短大卒より少し高い。
近年3年間について、不合格者数と翌年の既卒受験者数を比較すると、毎年1割ほどの差がある。つまり、一般養成課程を出て、試験に落ち、翌年の受験を諦める人の割合は約1割ということか。新卒受験者の2割弱が資格取得を諦めている計算になる(1,000÷5,400=18%)。これは、学卒者における4割という数字に比べれば低い。やはり「なにがなんでも資格が必要」な人の割合が高いのだろう。
ちなみに、2010年(第22回)比べると、新卒の受験者が400人ほど増えており、新卒の合格率に変化はないが、既卒者の合格率はやや下がってきている。
[短期養成課程]
社会人の短期養成課程の受験者はそれほど多くない。
不合格者数と翌年の既卒受験者数の差は15%ぐらい。これは新卒受験者の25%が資格取得を諦めている計算になる(250÷1,000=25%)。こちらも資格取得への切迫感が感じられる数字だ。
2010年と比べると、短期養成課程経由の受験者は約800人増えている。
[全体の表]
※:不合格者数と翌年の既卒受験者数の差
[ちょっとまとめ]
私は、社会福祉士の資格は、社会人の養成課程を廃して福祉学部卒だけにした方が良いのではないか、と考えていた。専門性の確立のためにはそのほうが良いと思ったからだ。だが、今回のデータを集計してみて考えが変わった。なぜなら、福祉系の大学を卒業しても、社会福祉士の資格を取れずに諦める人の割合がかなり高そうだからだ(今回概算で出した4割という数字がどれだけ信憑性があるかはともかく、事前に予測していたよりかなり高い数字がでてしまった)。
学部の新卒受験生は、10年前と比べて5千人以上減った。大学が定員を減らしたのか、学生が集まらなくなったのか、卒業しても国試を受けない人が増えたのか・・・。いずれにせよ少数精鋭になり、新卒の合格率は上がった(35%→55%)。既卒の受験者数は一時期増えたが、ここ数年は毎年減少している。既卒の合格率は10%台前半を低迷している。
(学部の既卒者のための、合格サポートという商売も成り立つかもしれない)
社会人のための養成課程は安定稼働している感じだ。既卒の合格率が10%台になるのは大学卒の人たちと同じであるが、合格できなくても受験を諦めてしまう人の比率は少ない(一般養成で全体の18%、短期養成で25%と推算)。そして、学部卒の受験者が毎年減少しているのに対し、養成課程は一般・短期ともにすこしずつ増えている。
この傾向がこのまま続くと、現在は受験者・合格者ともに学部卒の人たちが多数派だが、やがては社会人の養成課程の人たちが多数を占めるようになりそうだ。
学部の学生の減少は、大学にとっては大変な事態だろう。原因は少子化だけではないように思う。社会福祉は学問としては歴史が浅いが、学ぶに値する体系を持っている。現場たたき上げも悪くはないが、学問としての未来も明るいものであって欲しい。
(計算が間違っていたところがったので修正した)
毎年の受験者数や合格率は、過去の試験問題のページにある。
近年3回(2018~2020年・第30~32回)の平均を出してみた(以下、10の位で四捨五入し100人単位にしてある)・・・来週第33回の結果発表があるので、あわててこの文章を書いている。
受験者 | 合格者 | 合格率 |
---|---|---|
42,000人 | 12,000人 | 30% |
もうちょっと細かな数字が欲しいところだ。実は、養成課程のスクーリングの第1回でその数字をちょっと聞いたのだが、記憶が不正確だったので発表されている数字を探してみた。
日本ソーシャルワーク教育学校連盟の 国家試験情報のページに、学校別の数字が掲載されており、各ジャンルごとの新卒・既卒の数字も載っている。近年3回(第30~32回)の平均の数字を計算してみた。
[四年制福祉系大学卒]
四年制の福祉系学部を卒業見込みで受験する人たちは新卒にカウントされる。卒業の年に合格できず、翌年以降受験する人たちは既卒にカウントされる。近年3回の平均が以下の表だ。合格率は新卒が55%で、既卒は13%だ。
受験者 | 合格者 | 合格率 | ※ | ||
---|---|---|---|---|---|
四年制大学卒 | 新卒 | 8,600人 | 4,700人 | 55% | 3,500人 |
既卒 | 15,000人 | 2,000人 | 13% |
近年3回について、不合格者数と翌年の既卒受験者数を比較すると、約3千~4千人の差がある(平均すると約3,500人・・上の表の※)。つまり、毎年新規に約8,600人が受験しているが、同時に約3,500人の不合格者が翌年の受験を諦めている計算になる。
もちろんこれは、コホートを追跡調査をしたわけではなく、統計上の数字からの概算に過ぎない。しかし学部卒者の約4割もが資格取得を諦めているという数字は、ちょっと衝撃的だ。(3,500÷8,600=0.40という計算)。ただ、既卒者の合格率が13%と低いのでは、諦めたくなる気持ちも分からなくはない。
現在のカリキュラムになった2010年(第22回)試験の数字が下の表だ。当時と比べると、新卒での受験者数が5千人以上減って、合格率が35%→55%と上昇している。
受験者 | 合格者 | 合格率 | ※ | ||
---|---|---|---|---|---|
四年制大学卒 | 新卒 | 14,200人 | 5,000人 | 35% | 6,000人 |
既卒 | 15,000人 | 2,200人 | 15% |
この年の新卒・既卒あわせた不合格者数は約22,000人。それに対して翌年の既卒受験者数は約16,000人。実に約6,000人もが翌年の受験を諦めている計算になり、新卒受験者数に対する比率は約4割で、この数字は10年後の現在も経ってもあまり変わっていない。
[福祉系短大卒+実務経験]
福祉系の短大を卒業し、その後に実務経験を積んで受験資格を得た人たち。実務経験が必須なので新卒という分類がない。
受験者 | 合格者 | 合格率 | ||
---|---|---|---|---|
短大卒+実務 | 2,300人 | 300人 | 11% |
10年前は毎年3,000人受験していたのに、こちらも減っている。
[一般養成課程]
社会人の一般養成課程の近年3年の平均はが下の表だ。既卒の合格率は学卒や短大卒より少し高い。
受験者 | 合格者 | 合格率 | ※ | ||
---|---|---|---|---|---|
一般養成課程 | 新卒 | 5,300人 | 3,100人 | 55% | 1,000人 |
既卒 | 8,100人 | 1,500人 | 19% |
近年3年間について、不合格者数と翌年の既卒受験者数を比較すると、毎年1割ほどの差がある。つまり、一般養成課程を出て、試験に落ち、翌年の受験を諦める人の割合は約1割ということか。新卒受験者の2割弱が資格取得を諦めている計算になる(1,000÷5,400=18%)。これは、学卒者における4割という数字に比べれば低い。やはり「なにがなんでも資格が必要」な人の割合が高いのだろう。
ちなみに、2010年(第22回)比べると、新卒の受験者が400人ほど増えており、新卒の合格率に変化はないが、既卒者の合格率はやや下がってきている。
[短期養成課程]
社会人の短期養成課程の受験者はそれほど多くない。
不合格者数と翌年の既卒受験者数の差は15%ぐらい。これは新卒受験者の25%が資格取得を諦めている計算になる(250÷1,000=25%)。こちらも資格取得への切迫感が感じられる数字だ。
受験者 | 合格者 | 合格率 | ※ | ||
---|---|---|---|---|---|
短期養成課程 | 新卒 | 1,000人 | 400人 | 42% | 300人 |
既卒 | 1,500人 | 300人 | 17% |
2010年と比べると、短期養成課程経由の受験者は約800人増えている。
[全体の表]
受験者 | 合格者 | 合格率 | ※ | ||
---|---|---|---|---|---|
四年制大学卒 | 新卒 | 8,600人 | 4,700人 | 55% | 3,500人 |
既卒 | 15,000人 | 2,000人 | 13% | ||
短大卒+実務 | 2,300人 | 300人 | 11% | ||
一般養成課程 | 新卒 | 5,300人 | 3,100人 | 55% | 1,000人 |
既卒 | 8,100人 | 1,500人 | 19% | ||
短期養成課程 | 新卒 | 1,000人 | 400人 | 42% | 300人 |
既卒 | 1,500人 | 300人 | 17% |
※:不合格者数と翌年の既卒受験者数の差
[ちょっとまとめ]
私は、社会福祉士の資格は、社会人の養成課程を廃して福祉学部卒だけにした方が良いのではないか、と考えていた。専門性の確立のためにはそのほうが良いと思ったからだ。だが、今回のデータを集計してみて考えが変わった。なぜなら、福祉系の大学を卒業しても、社会福祉士の資格を取れずに諦める人の割合がかなり高そうだからだ(今回概算で出した4割という数字がどれだけ信憑性があるかはともかく、事前に予測していたよりかなり高い数字がでてしまった)。
学部の新卒受験生は、10年前と比べて5千人以上減った。大学が定員を減らしたのか、学生が集まらなくなったのか、卒業しても国試を受けない人が増えたのか・・・。いずれにせよ少数精鋭になり、新卒の合格率は上がった(35%→55%)。既卒の受験者数は一時期増えたが、ここ数年は毎年減少している。既卒の合格率は10%台前半を低迷している。
(学部の既卒者のための、合格サポートという商売も成り立つかもしれない)
社会人のための養成課程は安定稼働している感じだ。既卒の合格率が10%台になるのは大学卒の人たちと同じであるが、合格できなくても受験を諦めてしまう人の比率は少ない(一般養成で全体の18%、短期養成で25%と推算)。そして、学部卒の受験者が毎年減少しているのに対し、養成課程は一般・短期ともにすこしずつ増えている。
この傾向がこのまま続くと、現在は受験者・合格者ともに学部卒の人たちが多数派だが、やがては社会人の養成課程の人たちが多数を占めるようになりそうだ。
学部の学生の減少は、大学にとっては大変な事態だろう。原因は少子化だけではないように思う。社会福祉は学問としては歴史が浅いが、学ぶに値する体系を持っている。現場たたき上げも悪くはないが、学問としての未来も明るいものであって欲しい。
(計算が間違っていたところがったので修正した)
タグ:社会福祉士
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