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公認心理師の区分Gについて [心理の資格]

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[区分A・区分B・区分C]

公認心理師になるには、四年制大学で必要な科目を履修して卒業し、さらに大学院で二年間必要な科目を履修して課程を修了する必要がある(区分A:公認心理師法7条1号)。

四年制大学で必要な科目を履修して卒業した後に、二年間の実務経験を積んで受験資格を得るルートもある(区分B:法7条2号)。ただし、実務経験として認定される施設はとても少ない。公認心理師法施行規則第5条には、幅広い施設が挙げられているので、そのなかのどれかで実務経験を積めば良いと勘違いする人もいるようだが、第5条には「文科大臣及び厚労大臣の認めるもの」という文言がある。この認定を受けるためのハードルはかなり高く、現在のところ、9施設しかない(公認心理師法第7条第2号に規定する認定施設)。

区分C(法7条3号)は外国の大学と大学院で心理学を修めた人のためのルートで、第3回試験までに17人しか受験者がいない。

というわけで、これから大学生となって公認心理師を目指す人たちにとって、選べるルートは実質的に区分Aのみと言っても言いすぎではないだろう。

さて、公認心理師法は2015年9月16日に公布され、二年後の2017年9月15日に施行された。したがって、この法律で定められた科目を大学・大学院で履修できるようになったのは、翌2018年4月からである。2018年に大学に入学した人たちが、大学院修士課程を修了するのは最短で2024年3月となる。したがって、区分Aの人たちの受験が始まるのは2024年からになる。

(ちなみに、区分Bも2022年春に大学を卒業し、2年の実務経験を積めば、最短で2024年に受験できそうだが、実際には実習プログラムの関係で最低3年かかり、2025年からになりそうだという)

[区分D1とD2]

では、それ以前に大学・大学院で心理学を修めた人たちはどうするのか? 公布日(2017年9月15日)以前に大学院を修了した人たちは、必要な科目を学ぶチャンスがなかったわけなので、救済措置として、科目の読み替えによって、受験資格を得ることができる特例が設けられた(区分D1:法付則第2条第1項第1号)。2018年の第1回試験では、受験者の48%を区分D1の人が占めた。最近の試験では1割ほどに減っている。おそらく今後も減る一方だろう。

また、公布日には大学院に在学していた人たちについても、同様に科目の読み替えによって受験資格が得られる特例が設けられた(区分D2:法付則第2条第1項第2号)。こちらも、新卒の人がいなくなるので、今後は減るだろう。

[区分E・区分F]

公布日には大学に在学していて、卒業後に公認心理師向けの大学院に進んだ人たちも、大学での科目は読み替えで受験資格を得られる特例が設けられた(区分E:法付則第2条第1項第3号)。区分Eの人たちが大学院を修了して受験するのは、2020年と2021年の試験であり、その後は減るはずだ。

そして、公布日には大学に在学していて、卒業後に区分Bと同じ施設で実務経験を二年積んだ人のために区分Fが設けられている(法付則第2条第1項第4号)。しかしこれも区分B同様の狭き門だろう。

[区分G]

最も取り沙汰されているのは、区分Gである(法付則第2条第2項)。これは別名「現任者」と呼ばれる区分で、実務経験のある人に受験資格を与えたものだ。大学や大学院で心理についての教育を受けたことは条件にされなかったので、「心理を学んだことのない者に受験資格を与えている」として、大いに批判されたものだ。しかし、多くの国家資格において、その創設時に現業者を救済する措置が行われており、公認心理師試験に限ったことではない。

例として、医療関係の国家資格について、同様の経過措置が設けられたものを挙げておく。

資格 根拠法 法令(e-Gov)
理学療法士
作業療法士
理学療法士及び作業療法士法 昭和40年法律第137号
視能訓練士 視能訓練士法 昭和46年法律第64号
臨床工学技士 臨床工学技士法 昭和62年法律第60号
義肢装具士 義肢装具士法 昭和62年法律第61号
言語聴覚士 言語聴覚士法 平成9年法律第132号

いずれも、現に業として行なつている者(五年以上)高卒以上大臣の定める講習会を受講という条件がつけられ、経過措置の期間が五年間限りというのも公認心理師法と同じだ。法律は整合性を持たせることが必要であり、これらの法律において現業者への救済措置に専門的教育という条件を加えなかったのであるから、公認心理師だけにその条件を求めることはできない(その必要があるというのなら、法案作成の段階でその根拠を示す必要があった)。であるからして、現業者への経過措置に対して「心理を学んだことのない者に受験資格を与えている」という批判は的外れである。

むしろ、現業者として認める範囲を広くとったことのほうが区分Gの受験者を増やした原因だろう。上記の医療系資格の場合には、現業であるとは「病院、診療所その他省令で定める施設において、医師の指示の下に」業を行うという表現が付則にある。だから現業者であることは、管理者である院長(つまり医師が証明していた。しかし、心理師の業務は医療分野だけに限らない。となると、医療以外の分野での現任者の範囲をどうするかは、法案作成段階での調整が重要になる。業界団体の政治力次第であろう。

法案成立前後のことを振り返ってみると、話題になっていたのは「医師の指示条項」をどうするかという話ばかりだった。(私は門外漢であるから、実際には他のことにも関心が向けられていたことを知らないだけかもしれないが)。現任者の範囲をどうするかとか、誰が現業の証明をするのか、なんてことに関心を持って発信している臨床心理士はいなかったように思う。むしろ、精神保健福祉士の人たちが、自分たちに受験資格が与えられるかどうか気を揉んでいた。

MSW(医療ソーシャルワーカー)が資格化されなかった事情」というエントリでも書いたが、国家資格の創設時には、関係者の様々な思惑がせめぎ合うことになる。あの時、臨床心理士の人たちが「医師の指示条項」ばかりに関心を向けていたのであれば、その他の条項には他分野の人たちの思惑が強く反映される結果となるのは当然だ。法律というのはできてしまうと変更するのは難しい(政府案が発表された時点でと言っても良い)。区分Gに対する臨床心理士の人たちの不満も心情的には理解できるのだが、臨床心理士以外の人からすれば「今ごろなにを言っているのか」という冷めた見方しかできなくて当然だろう。

むしろ、時限措置とは言え大量に生み出された区分Gの(心理を学んだことのない)人たちに、現業を行いながら心理を学ばせ、実習を行うにはどうすれば良いかを考えた方が前向きだろう。

話は脇に逸れるが、2024年以降、毎年何人が区分A(新卒)で公認心理師試験に合格するのかを予想してみよう。これまでの3年間で区分D2および区分Eで約5,500人が受験し、合格率は68%だ。年あたり1,200人強の合格者だ。一方、臨床心理士は(新卒・既卒あわせて)年に二千数百人が受験し、2/3ほどが合格している。それらを踏まえて考えると、区分Aの合格者は毎年千数百人というレベルにになりそうな感じである。

それに対して、区分Gの合格者はすでに22,460人もいて、今後さらに第4回・第5回試験で増えることになる。少なくとも3万人には達するだろう。実に新卒20年分ぐらいに相当する数だ。その多くは心理検査もその結果の評価法も学んだことのない人たちだろう。心理の人たちにとってみれば、この層への教育を行うのは大きなビジネスチャンスに違いない。目ざとい人たちの草刈場になっていてもおかしくないのだが、あまりそういう話も聞かない。まあ、競走馬の調教ばかりやってきた人たちに、いきなり野生馬をつかまえて馴致しろと言うのも無茶かも知れないが。

[子ども家庭福祉士]

現在、子ども家庭福祉士という児童分野の福祉士の資格創設についての議論が進んでいる。精神保健福祉士と並ぶ児童分野のスペーシフィックなソーシャルワーカーという位置づけ(つまり並列)という案と、スクールソーシャルワーカーのように社会福祉士に上乗せする案が対立している。どのような決着になるのかも気になっている。

子ども家庭福祉に関し専門的な知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上策に関するワーキンググループ (2021/3/25 ワーキンググループへのリンクが間違っていたので修正した)

報告書は両論併記になった。ということは、例によって「業界団体の合意が得られなかった」という理由で資格創設は先送りになったわけだ。続きは社会保障審議会の社会的養育専門委員会で議論されるという。

参考リンク:
公認心理師法 (平成二十七年法律第六十八号)
公認心理師法に基づく指定試験機関及び指定登録機関に関する省令 (平成二十八年文部科学省・厚生労働省令第一号)
公認心理師法施行令 (平成二十九年政令第二百四十三号)
公認心理師法施行規則 (平成二十九年文部科学省・厚生労働省令第三号)

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公認心理師資格取得顛末記(その2 自己採点と合格発表) [心理の資格]

その1 受験まで からの続き)

配点と合格基準:
公認心理師試験の配点は、知識問題が116問で各1点、事例問題が38問で各3点だ。知識問題満点116点+事例問題満点114点=合計230点が満点で、合格基準は60%、すなわち138点だ。この基準は試験問題の難易度で調整することがあると書かれているが、これまでの三回の試験と今回の第三回試験で、一度も調整は行われておらず、常に138点が合格ラインだった。

(ちなみに、社会福祉士の試験では毎年調整が行われ、近年では150点満点で72点~99点と大幅に変動している。情報処理技術者試験は60%固定だ)

自己採点いろいろ:
自己採点は妻がやってくれた。解答速報が最も早かったのは、和光大学の髙坂康雅先生で、当日の夜には最初の発表があった。妻の採点によれば、私は最低でも150点は取れていそうで、もし基準の調整が行われたとしても、十分合格圏内と言えた。

もう一つ、IPSA心理学大学院予備校も当日中に解答速報を発表していた。

どちらも翌日には訂正が入ったが、最終的に正答の公式発表と違っていたのは、髙坂先生が2問、IPSAが6問だった。

その週のうちに、他からも相次いで解答速報が発表された。
心理系大学院受験対策塾プロロゴス
ファイブアカデミー(Z会)
LEC(東京リーガルマインド)
この三社は、公式正答との違いがほぼなかった(プロロゴスとLECは完全同一、ファイブアカデミーは1問違い)――いずれも不適切問題とされた問106を除く。

注意が必要なのは、メディカ出版の自己採点システムだった。こちらは、公式の正答とは34問も違っていた。これはどうやら、自己採点のためにユーザーが登録したデータを集計し、各問ごとに最も多い回答を正答としているのではないかと思われる。合否予測用に使えるのかどうか疑問が残る(とはいえ、私の場合には実際の得点と2点しか違わなかったが)。他のサイトが正答としているものとあまりに違って不安になった。

事例問題重視:
2021年2月の合格発表と同時に正答も発表された。

正答発表と突き合せてみると、私は、知識問題の正答率が56%、事例問題の正答率が84%だった。事例に強い、というのは現場経験が生きているのかもしれない。事例問題が1問当たり3点あったことも幸いして、7割の得点を得た。LECの試験講評には、事例問題は「現任者であることを確かめるような設題」とあった。

事例問題が3点というのは高すぎる、という批判を聞く。だから、将来には事例問題が2点に下げられることもあるかもしれないが、知識問題:事例問題の配点比率が1:1という事例重視の姿勢は今後とも変わらないのではないかと個人的に予想している。

ファイブアカデミーの自己採点の集計によれば、やはり、知識問題での得点の不足を事例問題の得点で補った人が多かったようだ。この傾向が今年だけのものなのか、以前から続いているものなのかは分からない。

(今年の社会福祉士試験では、事例問題は150問中29問と全体の約2割、点数も1問1点だ。事例の記述は公認心理師試験より短い)

心理に関する設問の占める比率は5割以下だ。残りは医療・保健・教育・福祉・産業・司法の行政法と事例である。社会福祉について多少なりとも学んできた私にとっては、重なっている分野が多くて助かった。

ちなみに、第三回の試験では、区分D(既卒者)の受験者は2千人余りまで減った。一方区分G(現任者)は1万人を超えた。合格率はそれぞれ約58%、約50%だった。全体の合格率は第2回の47%より下がるのではないかと言われていたが、53%に上昇した。これはおそらくコロナの影響で試験が延期されたため、受験を諦めた人が多かった(それにより分母が減っても、合格しなければならない人たちは受験した)からではないだろうか。

コスト:
かかったコストについて書いておく:
 ・現任者講習 65,000
 ・講習会テキスト 4,180
 ・受験手数料 28,700
この他に、合格後の登録手続きに、
 ・登録免許税 15,000
 ・登録手数料 7,200
合計 120,080

これが最低限必要なコストだろうか。実際は講習会テキストは妻のを借りたので費用はかかっていない。この他、受験申込みに貼る写真代とか、振込手数料とか、住民票の写しの費用とか、交通費などは挙げていない。第二回の過去問集が1,430円、第一回が1,980円だった。2020年からはオンラインで開催される講習会もあり、そちらは少しお安いようだ。

一からこの資格を取ろうと思えば、大学+大学院で6年間の教育を受ける必要があり、おそらく総額数百万円の学費がかかるだろう(最も安価なのは放送大学ではないかと思われる)。それに比べれば、12万円で取得できたのだから、「高かった」とは言えない。

登録手続き:
合格発表日に合格証が発送され、翌々日に書留が届いた。郵便局で登録手数料を振り込み、登録免許税として収入印紙を登録申請用紙に貼って、差し出した。書類に不備がなければ、2~3ヶ月で登録されるはずだ。その登録証が届いて、ようやく公認心理師を名乗ることができる。

他分野の者がこの資格を持つ意味:
さて、公認心理師の資格を持つことが、職業上の有利になるのだろうか? すでに臨床心理士となっていた人の多くは公認心理師の資格も取得したようだし、これから臨床心理士になる人たちもやはり公認心理師を取得するのではないかと思う。そして、心理の仕事が収入面で厳しいという状況もすぐには変わらないだろう。

では(私のように)他分野から現任者として公認心理師資格を取った人たちにとってはどうか? 現在の仕事から心理の仕事に移ると明言していた人は私の周りにはいなかった。兼務について言えば、例えば教師がスクールカウンセラーを兼ねるということは現実的でないだろう。この資格を得たからとて、他分野の人がいきなり心理の職業に参入するということは考えにくい。

私がかつて働いていた障害福祉の施設では、福祉専門職員配置等加算という仕組みがあり、社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士を職員として置いておくと、加算があった(施設の収入が増えた)。ここに公認心理師も加えられたので、障害者施設に就職するアドバンテージになるかもしれない。

他分野の人たちにとっては、すぐにこの資格を活かして仕事をするというより、それぞれの分野の中で生き残っていくのに有利に働くというメリットを期待しているのではないだろうか。いやむしろ、心理という言葉に憧れがあり、受験資格が取れそうなら受けたい・・・資格を取ってどんなメリットがあるか分からないけれど、という人も少なくない気もする。

そもそも、心理学を学んだこともなく、専門家のコミュニティにも属していない人が、資格を取ったからとて、いきなり心理の仕事ができようはずもない。そのことは、皆さん十分わきまえていらっしゃって、無茶なことを考えてはいないようだった。その上で、これから心理学の勉強をして、自分の分野の仕事にそれを活かしていきたい、と思って現任者講習に来たんだけど、想像してたのと全然違った、という感想はけっこう聞いた。それでも資格を取る人は取ってしまうのだろう。(私も含めて)これらの迷える者たちは、この先どこへ向かうのだろうか。

・・・職能団体などがこの層に向けた研修をしてくれて、当人たちにも学ぶ気持ちがあれば、心理師の裾野は広がっていくかもしれないが、果たしてそのように歯車がかみ合っていくかどうか。

いずれにせよ、区分G(現任者)で受験できるのはあと2回だけだ。

二つある職能団体のどちらに入会するか(あるいは両方入会するか)、という話は、登録が済んでから考えることにしたい。

追記:私は前年に合格した妻のテキストを借りたが、公認心理師試験はその年に出題基準(ブループリント)に追加された部分からの出題が行われる傾向があるので、古いテキストから学ぶのは良い戦略ではない。

追記2:心理の資格まとめ
臨床心理士:従前からある心理の専門資格。
認定心理士:大学で心理学の基礎を修めたことを証する資格。
公認心理師:2018年に新設された心理の国家資格(心理は名称独占)。

その3に続く)
タグ:公認心理師
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公認心理師資格取得顛末記(その1 受験まで) [心理の資格]

公認心理師試験に合格したので、今回はそれについてのメモ書き。

資格創設まで:
公認心理師は心理職の国家資格である。2015年に公認心理師法が可決されて、2018年に最初の試験が行われた。

それ以前から臨床心理士という資格が存在している。大学院まで学ばねば受験できない難易度の高い資格だが、民間資格である。

アメリカには psychologist(サイコロジスト、心理学者や精神分析医と訳される)という職業資格がある。サイコロジストは、精神科医(psychiatrist、サイシアトリスト)とは違って医者ではないものの、精神疾患を扱いながら、医師の指示下にはない独立した専門職だ。資格を得るには、大学院の博士課程を納めて(つまりサイコロジストは全員ドクターである)、さらに実務経験も積まねばならない。単なる心理カウンセラーとは違う、心理の専門家と言える。

臨床心理士はサイコロジストに匹敵する資格を目指して作られた資格だ。だが、日本では医師会の政治力は強い。臨床心理士は医行為はできない。医師とは独立した心理の専門職ではあるものの、活躍の場が限られてしまう。心理カウンセラーとして開業しても、健康保険の対象ではないので、費用はクライアントの10割負担となってしまい、割高感が生じて集客に苦労する。医療機関や学校にカウンセラーとして雇用されても、非常勤であることが多く、多くの人は少ない年収に甘んじている。

だから、心理の人たちは、臨床心理士資格の国家資格化と、業務範囲の拡大を目指して長年運動を続けてきた。一方、医療側からは、医師の指示の下で働いてくれる医療心理師を国家資格として新設して欲しいという要望がでてきた。

この構図は「MSW(医療ソーシャルワーカー)が資格化されなかった事情」と同じだ。医師側は、医師の指示の下で働いてくれるコメディカルとしての資格を作って欲しい。他方、専門職側は医師とは独立した国家資格を作りたい。このせめぎ合いの中で、ソーシャルワーカーの場合には国家資格が三つできてしまった(社会福祉士・精神保健福祉士(PSW)・介護福祉士)。

ソーシャルワーカーの場合に、社会福祉士とMSWの資格創設が並行して進んだように、心理の場合にも臨床心理士と医療心理師の資格創設が並行して進められた。しかし、途中から臨床心理士資格は民間資格として存続することになり、資格創設は医療心理師のみに絞られ、業務範囲を医療以外にも拡大する形で最終的に公認心理師という資格が作られた。

公認心理師(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116049.html
一般財団法人 日本心理研修センター
http://shinri-kenshu.jp/

臨床心理士の養成課程が心理学の修得と実践に重きを置き、心理の専門家を育てるためのものであったのに対し、公認心理師の養成課程は、心理学だけではなく、コメディカルとして働くために必要な医学の知識や、教育・福祉・産業・司法の分野で働くための各分野の行政法の知識を教えるものになっている。

臨床心理士が「孤高の専門家」といった印象ならば、公認心理師は多職種連携チームの中で働くというイメージだろうか(職責の中に「連携」が規定されている)。

既卒者や現任者に対する措置:
公認心理師の養成課程は大学4年+大学院2年になった。もちろん養成課程は法の施行後に作られたわけだから、学卒の人たちが国試を受験するのは、養成課程ができてから6年後の2024年からになる。

過去に大学院で心理学を学んでいた人たちは、当時の科目を公認心理師の指定科目に読み替える「科目の読み替え」を行って受験資格を得た(区分D)。最初の試験(2018年)には、この人たちが大量に受験して8割ほどが合格していった。

そして、現任者という受験枠も設けられた。これは実際に心理の仕事を5年間やっていた人たちが「現任者講習」を受けることで受験資格を得る仕組みだ(区分G)。これは5年間だけの経過措置である。

現任者に対する経過措置は多くの国家資格の創設時に行われている。長くその仕事をしている人たちは、国家資格ができたからとて、養成機関に入学して学び直すことは難しい。そこで、実務経験が証明できるのであれば、現任者講習を受けることで受験資格を与えるということが行われる。公認心理師だけが特別にそのような措置が行われたわけではない。

ただ、コメディカルの資格創設の時には、実務経験の証明は医療機関への勤務履歴の証明にほぼ等しかったわけだが、公認心理師の場合には、医療だけでなく教育・福祉・産業・司法と幅広い分野が定められていたため、学校の教師とか、私のように障害者施設での生活支援員まで含まれることになった。この中には、心理学を専門的に学んだことのない人もかなり含まれるので、心理の人たちからは「心理を学んだことがない者に受験資格を与えている」という批判もあった。おそらく、精神保健福祉士の人たちが働いてきた領域を含める必要はあったのだろう。ともあれ、法の定めのある施設(法内施設)が発行した実務経験証明書がリジェクトされた、という話は聞いたことがない。

一方で、カウンセラーとして開業するのには申請などは不要だ(法外施設とか民間機関などと呼ばれる)。自分で開業したり、法外施設に雇われていた場合には、実務経験の証明にかなり苦労したようだ。法人の登記謄本だとか、定款だとか、税務署への開業届、法人税の申告書だとか、業務委託の契約書などを添付して、心理の仕事をしていたことを証明しなければならず、多くの実務経験証明書がリジェクトされ、怨嗟の声が上がっていた。

一年目(2018年)の試験:
ともあれ一年目は、区分Dで1万8千人余り、区分Gは1万7千人足らずが受験した。1万7千人に対して現任者講習が行われたので、各会場とも数百人の大会場で行われたという。ちなみに、所定講習時間は30時間なので、4日間の日程で行われたところが多かった。一年目の現任者講習に出た人の話では、やはり心理の分野の人が多かったという。

一年目(2018年)の試験の合格率は、区分Dが約85%、区分Gが73%。

また、北海道で地震があって、試験が受けられなかった人のために、追加試験が行われた。これは二年目に受験する人たちには大きなメリットになった。なぜなら、過去問の量が倍になったからだ。一年目に受験した人たちからは、「現任者講習で学んだことが出なかった」という不満が出ていたが、過去問がない一年目の受験はそれだけ不利だ。にもかかわらず、合格率が高かったのは、心理学の専門家として合格せねば沽券に関わる人が多かった・・・のかもしれない。

二年目(2019年)の試験:
二年目の現任者講習は、医療分野の人(看護師とか)が多かったと聞いた。受験者はぐっと減って、区分Dが5千人余りに対して、区分Gが1万1千人余り。合格率は区分Dが約56%、区分Gは約42%。私の妻はこの試験で合格した。

三年目(2020年)の試験を受けることに:
一年目、二年目で分かったことは、現任者講習の枠はすぐに埋まってしまうということだ。申込期間が始まったらすぐに申し込まないとならない。私は三年目(2020年)の試験を受けるべく、2019年8月に申し込んだ。講習会は12月の土日を2回使って行われた。会場には500人近くがいた。社会福祉士の養成課程で一緒になった人もいて、立ち話をした。テキストは、妻が前の年に使ったのを借りた。改訂版が出ていたはずだが、そんなに違わないだろうということで。

講習は朝9時前から夜7時過ぎまで、みっちり講義を聴く形式。たまに隣や近くの人とのグループワークがあったが、それ以外は寝ないでいるのが重要なことだ(法定講習は寝てはいけない)。医療分野の講師は精神科医だったが、他の分野は、その分野で働いている心理の人たちだった。受講者は、私の周りは学校の教師が多かった。他には産業カウンセラーの人や、司法分野の人など。

試験は2020年6月に行われるはずだったが、新型コロナウィルス感染症の蔓延で延期になった。新しい試験日が知らされたのが8月。試験日は12月だった。すでに10月には別の国家試験(情報処理技術者試験)を受けていたので、アンダーコロナの試験がどんな感じなのかは分かっていて、そのことに不安はなかった。

勉強はどのようにやったのか? 心理学の勉強はしておかねばならない、と思った。ちょうど社会福祉士の養成課程(通信教育)にいて、各科目ごとにレポートを課されていた。心理学という科目もあったので、その教科書一冊を最初から最後まで読み、要点をレポート用紙にまとめたら10枚になった。この作業は多少は役に立ったように思う。その中身については、このブログで書いていってみようかと思う。

あとは、試験の直前になってから過去問をやった。試験の直前に休暇を取り、金曜・土曜と、二年目の試験問題を解いた。間違えた問題には付箋を貼り、二回目はその問題だけ解いていった。毎度のことながら、過去問集の冊子には、付箋がたくさん貼られてハリネズミのようになるが、それで良いのである。二年目の過去問の二周目を終えたのが、土曜の夕方だった。それから、一年目の試験問題の冊子に取り掛かったのだが、時間が足りずに冒頭のところしかできなかった。

当日は試験会場の開場後すぐに会場入りし、一年目の試験問題の残りをできるだけやった。試験時間は午前が2時間、午後も2時間。試験はすべてマークシートだ。会場には空席が結構あった(もともとコロナ対策で間隔を空けて座らされていたが、それでも来ていない人がいた)。試験が延期された影響もあるのかもしれない。午前中だけで諦めて帰ってしまった人は、ごく僅かだった。

その2に続く)(2021/3/19 受験者数の数字が誤っていたので修正した)
タグ:公認心理師
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